広島県にビジネスパーソンが集まって産官学金がネットワーキングするイベント週間「Hi! HIROSHIMA business week 2022」のコンテンツの一つとして、2022年10月3日に「システム×デザイン思考=ウェルビーイング ワークショップ体験」が開催されました。
会場は、広島駅から徒歩10分の場所にある叡啓大学。広島県が2021年に設立したばかりの,社会を前向きに変えるチェンジメーカーを育てる22世紀型大学です。
ワークショップは、そんな新大学の学びをお試しできる特別企画です。県内外のビジネスパーソンが集い、ウェルビーイングの観点から広島のまちづくりをデザインし、そのアイデアを共有しました。今回はその様子を体験レポート形式でお届けします。
<セミナー・イベントの概要>
叡啓大学 保井研究室 「システム×デザイン思考=ウェルビーイング」ワークショップ体験
実施日:2022年10月3日
場所:叡啓大学(広島市中区幟町1−5)
参加費:無料
<プロフィール>
叡啓大学ソーシャルシステムデザイン学部学部長・教授|保井俊之さん
1985 年東京大学卒、財務省及び金融庁等、パリ、インド並びにワシントンDC の国際機関や在外公館等に勤務したのち、地域経済活性化支援機構常務取締役、国際開発金融機関IDB の日本ほか5 か国代表理事等を歴任。慶應義塾大学大学院で2008 年から教壇に立つ。学術博士(国際基督教大学)。米国PMI 認定Project Management Professional。日本創造学会評議員、地域活性学会理事兼学会誌編集委員長、PMIJ理事、ウェルビーイング学会監事。
としちゃんと一緒に考える、ウェルビーイングなまちとは?
ウェルビーイングとは心の幸せ、もっと言えばあらゆる面で満たされている生き方のこと。近年ビジネスや経営においても注目されている概念であり、実際にウェルビーイングが仕事の生産性や創造性に好影響をもたらすという研究結果も出ています。
Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.
https://japan-who.or.jp/about/who-what/charter/
健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが 満たされた状態にあることをいいます。
出典:世界保健機関(WHO)憲章とは|公益社団法人日本WHO協会
今回のワークショップは、イノベーションを起こす方法論であるデザイン思考とシステム思考を使って、誰もがウェルビーイングなまちづくりデザインについて考えてみようというもの。ファシリテーターは叡啓大学システムデザイン学部の保井俊之学部長。六角形の各テーブルに3、4人がランダムに座ったら、さあワークショップのスタートです。
対話と協創の先に
「今日は私を“としちゃん”と呼んでください」という先生の言葉にいきなり目が点。わかりました、以下”としちゃん”でいきます。
としちゃんは複雑に絡み合う地球課題に対応する仕事を続ける中で「多様な人たちが対話すること」の大切さに気づき、「変わるためにはみんなで輪にならなきゃ」と考えました。そして、対話と協創からウェルビーイングへの道が拓けるのでは? とこれまでいろいろなところでワークショップを開いてきました。
「自利利他圓満(じりりたえんまん)ということが大事なんですね。それでこそみんなのウェルビーイングは実現します。そして自分のウェルビーイングと他者のウェルビーイングは対話と恩送りでグルグルと循環します」。
としちゃんの言葉を聞いていると、さっき点になった目からうろこが落ちる感じです。
広島にあったらいいな、こんなウェルビーイング
ワークショップではテーブルごとにチーム、いわば小さなソーシャル(社会)を作ります。苗字ではなく「呼ばれたい名前」を自らに付け、メンバーの共通事項を探してチーム名を命名。それができたら「広島にあったらいいな、こんなウェルビーイング」をテーマに、いよいよブレインストーミング(ブレスト)に入ります。
アイデアは質より量。どんな意見も否定せずに「いいね!」
ここでデザイン思考の登場。デザイン思考では,殻を破る発想力・直観力が大事にされます。くだらないことでも「恥ずかしい」と気後れすることなく、みんなでアイデアを出していきます。「質より量。決してどんな意見も否定せず『いいね~』とポジティブ原則でいきましょう」と、としちゃん。
幼稚園の砂場遊びと同じく、みんなで楽しく無心にするのが、よいブレストのコツです。まずは,「遊園地」「屋台」「地下鉄」「街中に温泉」など、広島にあったらいいなと思うものを,どんどん付せんに書いて模造紙に貼りつけていきます。ブレストという手法,よくわからないまま言葉だけ使っていたかもしれないと気付く受講者もいました。
アイデアが出そろったら、次は親和図の作成。メンバー間で合意形成しながら、アイデアをグループ分けしていきます。例えばこれはエンタメ関係で、こっちはグルメ関係…と、わがチームはいたって平凡な分け方になってしまいましたが、もっとぶっ飛んだ分け方だってアリなのです。
なんとか親和図が完成したら、全体を俯瞰しながら、つながりを作ってみます。これがシステム思考です。「遊んだらみんなお腹が空くよね」と、エンタメからグルメに矢印を引く。そんなふうに因果ループを描いていきます。
まさかの即興劇でプレゼンテーション
こっちも、そっちも、と因果ループを描いていたら、いつのまにか親和図は矢印だらけに。次はその中から問題解決のカギとなりそうな要素「レバレッジポイント」を見つけます。わがチームは「給料が高い会社を実現すればすべてがうまく循環するのでは?」と、そこにレバレッジポイントを見出しました。
と、そのとき「ではみなさんに即興劇をやってもらいましょう!」と高らかに宣言するとしちゃん。えっ即興劇!? なんと、レバレッジポイントを説明する3分間のストーリーを作ってチーム全員で演じる、それがこのワークショップのハイライトだったのです。
「まずは私がお手本を見せますね」と、としちゃんが参加者から任意でお題をもらいます。そんな簡単に…と思っているうちに、間髪をいれず始まった即興劇の素晴らしかったこと!
としちゃんの振り切った演技にはなかなか近づけませんが、わがチームもメンバー同士でああでもないこうでもないと話し合い、あるお父さんが奮闘努力して給料の高い会社を作るサクセスストーリーを考えてみました。
しかし時間の都合で発表は1チームのみとなり、ホッとしたような残念なような…。
ともあれ発表したチームの息の合ったプレゼンに大笑い、みるみる心が晴れていく2時間のワークショップでした。
広島はウェルビーイングに一番近い土地
最後に参加者から「広島はウェルビーイング的にはどんな土地ですか?」という質問が出ると、としちゃんは「広島は食も自然も豊かな地域、さらに歴史的なレジリエンスも高く、ウェルビーイングに溢れている土地です」と即答。
「ただ広島に住んでいる人はなかなかそれに気づいていなくて、広島から一度出た人、県外から広島を見る人の方が、広島がウェルビーイングなまちであることに気づきやすいのかもしれません。『広島はウェルビーイングに一番近い土地』と私は言いたいです!」
ライターはこう思った!
ワークショップを体験してみて、対話や協創の中からウェルビーイングへの道が拓けること、その中から社会を変えるようなイノベーションやチェンジメーカーを生みだされるのだと期待が高まりました。
ワークショップの舞台となった叡啓大学は、開学2年目にして,すでに企業や行政,国際機関等111団体と協力関係を築き、「正解」のないリアルな課題解決に向けた学びを実践しているそうです。広島には次世代とのつながり、出会いの可能性があふれていることに気づかされました。
「広島でイノベーションを起こしたい!」「広島でウェルビーイングな日々を送りたい!」という方は、多様な人材と企業が集まる広島に、一度視察に来てみませんか?