地元企業インタビュー

2023.02.17

SNSの人気者「ゆかり姉妹」の生まれ故郷はやっぱり遊び心が満載でした

  1. 広島市
  2. 三島食品

ふりかけの「ゆかり」は、発売から半世紀以上のロングセラー商品として全国的に有名ですよね。実は広島生まれなんです。ゆかり・かおり・あかり・・・と、シリーズが増える度に「ゆかり姉妹」としてSNSで話題になり、広島菜のふりかけ混ぜごはんの素「ひろし」は初の男性キャラ登場ということもあり空前の大ヒットとなりました。三島食品株式会社 代表取締役社長の末貞 操さんに、商品開発の舞台裏を伺いました。

<プロフィール>
三島食品株式会社 代表取締役社長
末貞 操(すえさだ みさお)さん
広島県生まれ。広島大学水畜産学部(現 生物生産学部)を卒業後、1981年に研究職として三島食品に入社。主に工場の品質管理を担当。コンピュータ導入をきっかけに、外部講座で初心者向けのプログラミングを学び、工場のMRP(生産管理システム)を開発。全工場への導入を手がける。関東工場の工場長、関連会社のグループ会社のレジャー施設再開発プロジェクトリーダー、生産本部長兼営業本部長などを経て、2017年に代表取締役社長に就任。https://www.mishima.co.jp/

※「ゆかり」「かおり」「あかり」「ひろし」は三島食品株式会社の登録商標です。

ロングセラー誕生までの道のり

素材にこだわることで全国区へ

戦後間もなくの創業ですが、当時の話などは聞かれていますか。

末貞社長 創業者は三島哲男さん。高等小学校卒業後、食品問屋に丁稚奉公していたと聞いています。戦地へ赴いた後、同じ問屋に戻り、整理閉店にともない乾物販売の商店として独立。ある時期から「ふりかけ」製造を試みるようになったそうですが、全国的にも後発メーカー。なかなか売れなくて…そこで、厳選した海苔や鰹節など「素材にこだわる」という路線に舵を切り、家庭向けの量り売りや学校給食に参入。徐々に軌道に乗せていったようです。

― 看板商品「ゆかり」は発売から50年以上も経つんですね。

末貞社長 最初は業務用の商品でしたが、給食で使われ始めて、親しまれるようになりました。色・香りともに優れた原料の赤しそを確保するために、2006年には北広島町に自社農園「紫の里」を新設して、「ゆかり」に最適な品種も自社開発しています。

― 「ゆかり」の姉妹も続々と登場し、シリーズ化されてますね!

末貞社長 「ゆかり」の後、「かおり」「あかり」が発売されましたが、3姉妹と名付けて広めてくれたのは、SNSユーザーのみなさんなんですよ。CMなどに頼らず、良い原料で良い商品を作り、良い売り方をしてファンを増やすという、当社の方針にもマッチしました。数年前から、「ゆかり」のパッケージに自分の名前を入れられるアプリも公開しています。

自分の名前がふりかけのパッケージに!公式サイトから楽しめます。

広島菜を使った「ひろし」も加わりました。ヒットの要因は何でしょうか。

末貞社長 やはり名前のインパクトですかね。実は「ひろし」というネーミングは会議では0票で、「ひろこ」に決定していました。ただ家に帰ってからどうも違う…という気がしてきてね。寸前のところで、「ごめん、変えてくれ」と「ひろし」を採用したんです。「ひろしまな」と「ひろし」は3文字かぶっているし、初の男の子というのも意外性があっておもしろいでしょう? 翌年には「かつお」くんもデビューしました。

「B面活動」で社員のモチベーションアップ!

ーふりかけ姉妹シリーズをはじめとした、三島食品の「遊び心」はどこから?

末貞社長 当社には社員の本来業務「A面活動」とは別の分野で、それぞれの特技やアイデアを仕事に生かす「B面活動」というのがあるんです。たとえば,本社の工場で働くロボットで「つみきりん」というのがあります。ベルトコンベヤーで運ばれてきた箱を持ち上げて積み上げるロボットなんですが,キリンの模様がついていて,いつもBGMが流れています。絵画や作詞・作曲が得意な社員たちのB面活動から誕生したんですよ。

工場見学では子どもたちに大人気のつみきりん。軽快な音楽に乗って動いています。

―  生産効率には関係ないけどアイデアが採用される工場って楽しそうです!

ー末貞社長 そうですね、B面活動のはじめは、工場での工作技術の取得だったんですけどね。営業では「レジェンドセンター」と呼ばれる組織が役立っています。
これは、役職定年になった営業員を「レジェンド」と呼び、退職まで活動してもらう仕組み。人事組織図には出てこない、いわば裏組織のようなものです(笑)。

― 裏組織⁉  ベテラン社員のミッション、気になります。

末貞社長 レジェンドたちには、社員を鼓舞するコメントを日報に書いてもらって、全社に発信するんです。ポイントは、「隣のおじさん目線」で優しく励ましてもらうこと。かなり年上の先輩から元気になれるコメントもらうので、実際に社員の士気も上がります。
これ以降、スーパーの大量陳列を極める「テクニカルディスプレイセンター」や、「ゆかり」×おはぎの可能性を探る「おはぎミニセンター」など、いろんなセンターが誕生しました。

― なるほど。「センター」と呼ばれる組織体系は、クラブ活動のように感じられます。

末貞社長 年齢・役職などに関係なく、社員が自分の持ち味を最大限に発揮できますからね。
入社数年目の若手でも、支社や工場で働くスタッフでも、自分のセンターを持つことで、アイデアを全社横断的に発信できます。人事異動は関係ないし、辞めるのも自由。負担がないのもいいところです。ただそれが、営業活動のヒントや会社の業績アップにつながることがあるんです。

― 最近の「B面活動」は?

末貞社長 実は当社には「東京プロダクション」という動画編集部隊がいて、俳優陣、ナレーション、演出、編集メンバーなどがそろっているんですよ(笑)
そんな彼らの力を借りて、業務用商品のプレゼンに使う新しい動画(限定公開)を制作しました。動画の内容は「栄養戦隊ニュートリジャー」という栄養素のキャラクターが登場する戦隊モノです。すると、自然な流れで、主題歌も作りたくなりますよね (笑)。そこで、作詞・作曲が得意な社員に担当してもらい、社内公募で集まったボーカル9人がレコーディングに臨みました。実は私も歌っております。

産学連携で、スマート農業にも取り組む。

代表取締役社長 末貞 操さん

広島に根付いた会社として、地元への思いを聞かせてください。

末貞社長 広島は、会社を育ててくれた土地ですので、大事にしていきたいという特別な思いがあります。自社農園の「紫の里」では、地元の広島大学をはじめとした教育・研究機関などと連携しながら、多分野の研究も長く続けているんですよ。
例えば、赤しその含有成分を調べて効能を探ったり、栽培自動化に向けたロボット技術に取り組んだりしています。次世代のスマート農業の土台になればと思っています。

それでは最後に、地方進出を考えられている企業にメッセージをお願いします。

末貞社長 広島は国際的な知名度があって、観光資源にも恵まれた街です。公的な機関が中心部に集まっているので何かと便利。事業展開しやすいのではないかと思います。それと、個人的にいいなと思うのは、海、山、川に囲まれているので風が埃っぽくないこと。風光明媚で風がきれい。これまで転勤で他県に住んだ経験を経て、生まれ育った街を今そんなふうに感じています。

ライターはこう思った!

全国的に有名な三島食品ですが、社内の「B面活動」は知りませんでした。ただユニークなだけではなく、会社や社員にプラスの効果がもたらされているという点がすごい! 社長自らレコーディングをされた時の裏話を聞いて、サービス精神をひしひしと感じました。社内ベンチャーほどガチガチではなく、ゆるさも兼ね備えているのが続く理由なのかもしれませんね。次にデビューする新商品も楽しみです。

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