生産装置や機械などの金属部品を作るメーカーなのに、スポーツ選手のステッカーやアニメの世界を具現化したグッズが大人気で、SNS等で話題になっているのが、広島県福山市の株式会社キャステムです。なんと新卒採用**人の枠に応募者が800人も殺到しているとか!人手不足を嘆く製造業は多いというのに驚きです。人気の秘密を探るべく、同社代表取締役の戸田拓夫さんと、オリジナル商品事業を行う新規事業本部IRON FACTORY上席課長の池田真一さんに話を聞きました。
<プロフィール>
株式会社キャステム代表取締役 戸田拓夫さん
1956年生まれ。広島県福山市出身。1980年、早稲田大学を中退後、父が創業したキャステム(旧キングインベスト)に入社。1995年に日本折り紙ヒコーキ協会設立。2007年、キャステムグループ代表者・最高責任者に就任。2011年、創業者の父が亡くなった後、会社の変革に取り組み、さまざまな新規事業立ち上げの旗振り役となる。https://www.castem.co.jp
精密鋳造技術をアピールしたくて、おもしろ商品開発に行きついた
ー部品メーカーってそもそも受注事業が多いですよね。個人向け商品を作り始めたきっかけは?
ー戸田さん うちの精密鋳造技術をどう世の中に伝えていったらよいか考えた時、数字やデータで知らせても伝わらないと思ったのです。そこで「キャステムの技術を使えば、こんなもの作れるんだよ!」っていうのをモノで示せば、わかってもらえるんじゃないかと。それで髪の毛にのる小さな戦艦大和を作ってみたり、漫画「キン肉マン」の人気超人ロビンマスクを鋼で作ってみたりしたら、話題になって多くの人に知ってもらえたのです(笑)。
ー好感度、めっちゃ上がったでしょうね
ー戸田さん おかげさまでいろんなオリジナル商品がバズりました(笑)。その結果、今まで取引がなかった企業から仕事をいただいたり、こんな部品作れますかと問い合わせをいただくことが増えたんですよね。
ービジネス的な宣伝効果もあったと!
ー戸田さん 鋳造部品メーカーは一般的にはマイナーな存在なので、採用募集しても人が来なかったんです。でもうちの技術を使えばこんなおもしろいモノが作れるんですよってアピールしはじめたら、今ではありがたいことに新卒採用募集に800人もエントリーしてくれるようになりました。
ー採用マーケティングにもつながるなんて、すごすぎる……
全社員に社長になったら何をしたい?と問いかけ、新規事業立ち上げ
ーユニークな商品を生み出しているのは誰?
ー戸田さん うちの仕事は基本受注。お客様が欲しいものを作るのが仕事です。でも社員は社員で自分たちで作りたいものもあるはず。そこで全社員に、もし自分が社長だったらどんな事業をしたいのか?どんなものをつくりたいのか?と問いかけ、書いてもらいました。その中からおもしろいものをピックアップし、選ばれた10数人がプレゼン。そこから個人向けオリジナル商品事業や農業など、いくつかの新規事業が誕生しました。
ー社員が前のめりに考えだしたわけですね?
ー戸田さん 私は父親から会社を引き継いだ2代目。自分自身も会社で楽しめることをしたいと思い、会社をがらっと変えてしまおうと思ったのです(笑)。私自身おもちゃ作りをしたいという夢もありましたし。社員が作りたいものを作ることで楽しく仕事ができるようになれば、結果、技術力も知名度もアップし、お客様にも喜んでもらえる良い循環を生み出すことができました。
まさかの企画会議なし!社員が作りたいものを作っていた
ーオリジナル商品事業を担当する池田真一さんにも話を聞いてみました。仕事は楽しいですか?
ー池田さん 楽しいですよ!自分が欲しいものや作りたいものを作れるので。企画会議とかも一切ないので、何気ない雑談から、「なんかおもしろそうだから作ってみようか」って感じで商品が誕生しています。社長が販売していることを知らない商品もたくさんあるはず(笑)。
ー社長のOKなし!? でも売れない商品や失敗した商品もあるんじゃ?
ー池田さん はい、もちろんありますよ(笑)。でも失敗したはずが、成功したものとかもあるんですよ。たとえばバナナを精密鋳造技術で金属化した「メタルバナナ」を作ったのですが、まったく売れなくって。でも売り方が悪いんじゃないかって話になり、バナナで釘が打てる「バナナハンマー」という名前に変えたら急に売れ出して!海外からも注文がくるようになったのです。
ーなんてアジャイルな職場なんだ……
ー池田さん 受注仕事とは違い、自分たちで商品名を考えたり、値段を決めたり、売り方やパッケージデザインを考えたりしなくてはならないので、大変は大変ですが、やりがいも感じています。
たとえば、他部署の数千万円する医療用マシンを借りて、ステッカー誕生させてみたり
ー最近の自信作は何ですか?
ー池田さん 広島東洋カープの新井貴浩監督の顔を3Dスキャンし、立体化した3Dフェイスステッカーはおすすめですね!
ー想像よりリアルです
ー池田さん うちは3D造形技術にも強みを持っているんです。主に医療用の部品製作のために数千万円もする3Dプリンターがあるのですが、実はまだあまり使われていないんです。そこでこれはチャンス!とばかりに(笑)、その高価なプリンターを使って、いろんな有名人の3Dフェイスステッカーを作っています。評判が良く、商品を出す度にネットやメディアで話題になっています。
ー自由と技術の共存ですね
ー池田さん 3Dプリンター技術を活用し、ホコリよりも小さい全長0.2mmの福山城を製作して、福山市に寄贈したりもしています。
ステーキ食べ放題190円!みんなの胃袋わしづかみ
ーツイッターで約10万いいね!がついた山盛りステーキ。御社は、あの夢のような社員食堂の会社ですよね?ど!
ー戸田さん モノづくりの会社にとって大事なのは何よりも社員。社員ががんばって働いてもらうには、まずは社員の胃袋をつかめということで(笑)、社員食堂を充実させることにしました。
ー入社したくなってきたんですけど!
ー戸田さん 月に1回スペシャルデーがあって、あのステーキは、その時の写真ですね(笑)。社員は170円払えば食べ放題!ほかにもローストビーフ食べ放題をしたり、うなぎ食べ放題をしたりしています。
ー入社したくなってきたんですけどーーー!!
ー戸田さん 社員食堂もバズったおかげで、社食を食べたいがために会社に入りたいと言ってくれる人が増えました(笑)。シェフにはいつもおいしい料理を作ってもらえるよう、経費を出して、おいしい店に食べに行かせて研究してもらっています(笑)。
広島県はモノづくりの“テーマパーク”
ー広島に進出する企業って、いいことありそうですかね?
ー戸田さん 広島県の強みはなんといってもモノづくり企業がそろっていること。あらゆる部品調達が可能なので、新商品開発拠点などには最適な場所だと思います。うちの会社は他社が断るような面倒な部品も小ロットでできるので、新商品や試作品開発の拠点にぜひ広島に!協力できると思います。
ゆくゆくは広島のモノづくり企業を集めたテーマパーク的なものを作って、一般の方がいろいろなワークショップが体験できるような場も作っていきたいと考えています。
ライターはこう思った!
遊び心は、企業の成長に役立つんですね。社員のモチベーションアップや、取引先増、採用エントリー増など結果が出ている!しかも、すべてはモノづくりをする社員の幸せを最優先にしているからなんだと感激しました。ニュースネタになりそうなオリジナル商品、今後もチェックしていきたいと思います。社食もぜひ一度食べたいです(笑)。
こんな会社と出あい、日々コラボしながら、新サービスを開発したら世の中が変わる気がします。広島にラボ設置なんて、どうですか??