働き方の多様化が急速に進む昨今、「二拠点生活」というライフスタイルが広がりを見せています。実際にそれを始めるとなると、何をどうしたらいいかを知る機会はなかなかありません。そこで縁あって広島と東京の二拠点生活を始めたベンチャー企業の社長が、その経験から得た二拠点生活の始め方のコツや考え方、注意すべきポイントなどを語り、これから始めようと思っている方、興味のある方々に少しでもお役に立てるようお届けしていきます。
<プロフィール>
シゲ社長:従業員約15名のデジタルマーケティングが主業務のベンチャー企業を経営。広島県や瀬戸内界隈の仕事が増えたため、「ずっと広島県」の制度を利用して数年前に広島にオフィスを開設。同時に東京と広島の二拠点生活を始める。
「住民票を移す」ことの重大性
皆さん、こんにちは。
今回は、自分が二拠点生活を始めるにあたって経験した行政手続きについて触れたいと
思います。
プロフィールにも触れているとおり、二拠点生活を始めるきっかけとなった制度が、広島県の企業誘致支援制度の「ずっと広島県」でした。最大1億円の支援ということで、少し前から大きな話題になっている制度です。うちの会社もオフィス設置などでこの恩恵にあずかった大変ありがたい制度です。
その要件に沿った形で、うちの会社の場合は「代表の移住」つまり自分が住民票を広島県に移動させることになりました。
しかし正直言って最初は「本当に大丈夫なのかな?」「なにか家族の生活などに支障がでてこないかな?」と不安な気持ちでした。
色々調べても、なかなかしっくり来る情報も出てきません。
そもそも恥ずかしながら「住民票」が実質的にどんな役割をもっているのかも、はっきり認識しているわけでもありません。
でも実際にやってみると、なんとなくその実感が湧いてきました。
なんともあっけない「転出」手続き
期限が迫ってきたので、もう行くしか無いと東京の区役所に行き、いわゆる「転出届」の手続きに。
マイナンバーカードと印鑑登録カードをもって窓口にならぶと、数分もせずに順番が来て受付に提出。
カード類を提出し、たしか簡単なカードに名前と住所を書いて提出したら、終了でした。
なんというあっけなさ……。
心の底では、「なんで出ていくんですか?」「長く住んでいただいてありがとうございました!」「いつか戻ってきてくださいね」的な話のどれか一つくらい交わされるのかと思っていたのが、小っ恥ずかしいくらいでした。
考えてみれば、忙しい窓口の方がいちいちそんなこと言うわけありません。
転入先で、2週間以内だったか、そのくらいまでに手続きしてくれと言われて、ものの5分もかからずに手続き終了。
これで自分は、30数年の都民生活を終えたのでした。
これは逆も然りで、引越し先の広島市の区役所でも同様の手続きで、あっという間に手続き完了。
もう「ようこそ!」なんて言われる期待はしませんでしたよね。
まだ日本には制度的に「二拠点居住」という分類はない
この手続きの中で気づいたのは、日本の行政制度として「二拠点居住」「二拠点生活」という認識やカテゴリーは全く無いということです。
この言葉自体、最近使われ始めたばかりので、当たり前といえば当たり前ですね。
では、自分はどういうカテゴリーに分類されて認識されたのか。
それはおそらく、いや間違いなく「単身赴任」です。
まあ、たしかに言われてみればそうかも知れません。
でもいわゆるあの昭和的な「単身赴任」をしている意識は自分の中では全く無かったので、それはそれで意外でした。
同時に知ったのは、法律的にも住民票の移動は原則必須ということです。
単身赴任の場合でも、また学生などで上京して移住する場合などでも、主に居住する市区町村にちゃんと届けて、住民票を移すことが法律で義務付けられていて、ちゃんとやってないと罰則もあるんですね。
こんなことも、あまり考えたことがなかったし、正直知りませんでした。
一方で、東京に”残された”家族はどうなるのか?
自分の場合、家族と自分との「世帯」が分離されることになり、東京の自宅のいわゆる「世帯主」は、妻ということになります。
妻はこれを聞いて何を思ったか、ちょっと気を良くして、東京の家にいる時は、何かと「私が世帯主だからね!」という言葉を発し、以前に増してその支配力を強めています。
住民票を移して変わったこと
これは後で分かったのですが、自分の場合は、住民税や給付金などについて、自分が住民票を移したことによる影響は、多少の違いはあれどほとんど気になるほどではありませんでした。
細かいですが、ふるさと納税も、当然自分が住む広島市にはできませんが、周辺自治体を含めて問題なくできるので、例年と同様に寄付できました。
あと変化があったのは「選挙」ですね。これも当然ですが、住んでいる場所の選挙権をもつので、自分も昨年初めて広島県の地方選挙に参加しました。東京と比較して実感したのは、候補者の少なさ。これはもうなんとも言えない気分で、色々と考えさせられました……。
今後、住民票を移す際に注意がいるとしたら、今話題になっている「子育て支援制度」などが、自治体によって差がでてくる点はあるかもしれませんね。
ただこれも、(おそらくですが)「子供」自身が住んでいる自治体の制度が適用されることがほとんどのようなので、扶養している親の所得などが変化すれば別ですが、そうでなければ、自分が住民票を移すことだけで大きく変わることは、殆どないような気がします。
個々の状況でその影響が違う可能性があるので、事前に自治体に相談して確認するほうがいいですね。
転出手続き自体も、マイナンバーカードを持っていればオンラインでできるようになったようです。
ということで、やる前は少しビクビクしていた「住民票の移動」という手続きについては、自分の場合は特に大きな支障もなく過ごせています。
次回は、会社の経営者としては大きな課題になる「マンションの家賃をどの程度経費で落とせるのか」について、自分の経験を書いてみようと思います。
ではでは。