株式会社Rejoui(リジョウイ)は、コロナ禍を機にフルリモート体制を整え、2021年には代表取締役 菅由紀子さんの故郷広島県に新拠点を開設しました。女性が少ないデータサイエンス領域にありながら、同社では社員の9割が女性です。日本を含む3カ国、12都市から集まるメンバーが場所や時間にとらわれず、フレキシブルに活躍しています。広島市内にあるオフィスを訪ね、菅さんに地元への想いや活動について話を聞きました。
<プロフィール>
株式会社Rejoui 代表取締役 菅 由紀子さん
広島大学 客員教授/データサイエンティスト協会 スキル定義委員、大崎上島町出身。
趣味も社名も新規事業も、聞けば聞くほど深い地元愛!!
ー拠点開設の経緯は?
―菅さん 広島県の大崎上島出身で、いつかは広島でビジネスをしたいという思いはあったのですが、それ以前に私はカープの大ファンで(笑)
関東で野球好きの集まりに参加した時に知り合った広島の方が、広島県の様々な情報を共有してくれうようになりました。それで自然に広島でビジネスをしているスタートアップ企業の人たちとも交流が広がって、広島でこんなことをしたいというアイデアがあふれてきました。
―拠点を開設する前から、広島で活動を始められていたのですね。
―菅さん はい、2020年に、「WiDS( Women in Data Science )」のひろしま版を立ち上げたくて、度々足を運ぶようになりました。
「WiDS」は、ジェンダーに関係なく次世代データサイエンティストを育てることを目的とした米国スタンフォード大学発の世界的なイベントです。すばらしい取組みを知って以来、地元広島での開催を強く夢見ていたのです。
結局、「WiDS HIROSHIMA」として、広島県庁と一緒に開くことで実現します。Python入門講座ではカープの応援歌を分析したことも! 広島弁も盛り込みながら楽しくすすめていますよ。翌2021年に拠点を開設したのは、WiDSがきっかけですね。
―故郷への愛ですね。もしかして、社名の中にある「リジョウ」って、「鯉城」だったりします?
ー菅さん ふふふ、気付きましたね。社名自体は、人間の持つ三つの心的要素を表す「知・情・意」からインスピレーションを受けて、さらにデータサイエンスらしく数理の「理」、情熱の「情」、意志の「意」で「リジョウイ」としたんですが、実は起業前に広島に帰省した時、バスの中から広島城(別名 鯉城)を見て、これは良いかも!とひらめいたんです。
広島での事例が全国に広がっていく
―広島に拠点を設けてから、仕事内容に変化はありましたか?
―菅さん そうですね。「WiDS HIROSHIMA」のほか、広島大学発の産官学連携プロジェクト「ひろしま好きじゃけんコンソーシアム」の活動、HBMS県立広島大学ビジネススクールでは授業も受け持つようになりました。
―広島県主催「みんなのDX研修」の講師もされていますね。教育やDX支援についての考えを聞かせてください。
―菅さん データサイエンスが未来のビジネスを明るくする、と確信していますが、まだ新しい分野ですので、データを扱う人材、デジタル人材の不足は否めません。
私たちが目指しているのは、世界一親しみやすく、わかりやすく、データサイエンスを伝えていくことです。
データを扱うことで課題を解決し、新たな価値を創造できる人を増やしていく、そのために、学校・企業・自治体など、組織に応じたカリキュラムや教材を用いて、人材育成に注力しています。
実際に、他県からも「広島県の企業や学校で実施したDX研修をうちでも」とお声がかかるようになりました。
こだわりは、ダイバーシティ&インクルージョン
― リジョウイは社員の90 %が女性メンバーですね?
―菅さん リジョウイでは、創業時から女性が中心となって事業を進めてきましたが、データサイエンティストにおける女性の比率はわずか13%なんです。
女性の活躍推進にも通じますが、私たちは「ダイバーシティ&インクルージョン(人材の多様性を認め、受け入れて活かすこと)」をベースに日々の業務に取り組んでいます。
女性が働きやすい環境って、誰もが働きやすい環境だと思うんです。
メンバーはフルリモート勤務ということもあり、場所や時間に捉われることなく、個々のライフステージに合わせた多様な生き方、働き方を追求しています。
― 地方創生についても伺いたいです。
―菅さん はい、コロナで私たちのライフスタイルはずいぶん変わりました。地方こそ、デジタル技術を活用し、自然と共生する「開疎」な空間の実現が必要不可欠だと考えています。
私の生まれ故郷、大崎上島を例にあげると、言い方は悪いですが日本の典型的な「滅びゆく島」でした。それが近年「学びの島」に生まれ変わろうとしています。
―大崎上島といえば、バカロレア認定された全寮制の広島県立広島叡智学園もありますね。
―菅さん そうです。大崎上島の人口内訳を見ると10代が多いのはこの影響もあります。また、学校だけでなく、仕事や趣味、あらゆる日常の中で誰もが学べる場づくりを推進する一般社団法人「まなびのみなと」の存在も大きいです。
ゆくゆくは、大崎上島にも当社の拠点を設け、データサイエンス領域で幅広い年代層への学びのサポートをしたいと構想を練っているところです。
そして、広島県から全国へ、データサイエンス人材の育成やスキルの底上げに尽力します。
― それでは最後に、地方進出を考えられている企業にメッセージをお願いします。
―菅さん 広島県はスタートアップ企業の挑戦を熱烈に応援してくれるので、何をするにも動きやすいです。また、地方進出のサポートをしてくれる広島県 県内投資促進課の皆さんの熱意もすごい。色々なアイデアを提案してくれるし、マッチングもしてくれる。最後に必要なのは行政の後押しだったりするので、心強いですよ。
また、広島県と深く関わるようになって、地方が抱える課題をより深く理解することができました。データサイエンス領域でいうと、地方はまだまだ未発展で伸び代しかありません。広島県での取り組みが全国展開へのモデルケースにもなると確信しています。
<プロフィール>
株式会社Rejoui 代表取締役 菅 由紀子さん
広島大学 客員教授/データサイエンティスト協会 スキル定義委員、大崎上島町出身。広島女学院、中央大学卒業後、(株)サイバーエージェント、(株)ALBERTを経て、(株)Rejouiを設立。データ分析、DX推進支援、データサイエンス教育事業を展開。2021年、広島オフィスを新設。広島県主催「みんなのDX研修」など、西日本地域を中心にデータ利活用推進に取り組んでいる。同年、アンバサダーを務める人材育成の活動(WiDS HIROSHIMA)が評価を受け、日本統計学会統計教育賞を受賞。https://rejoui.co.jp/
ライターはこう思った!
データサイエンス人材の育成が地方の発展にもつながる。良い循環ですね!
データ分析やAIの仕事といえば、理系出身の男性ばかりのイメージでしたが、リジョウイは、主要メンバー9割が女性というのにまず驚き。しかも、代表の菅さんが広島を拠点に日本国内のみならず、海外のメンバーともオンラインでつながり日々の業務に取り組んでいる。
地域課題の解決にはデジタル活用が必須で、それを動かす人材の確保・育成が急がれる今、DX支援・人材育成に注力するリジョウイの取り組みが、これからの地方の未来を明るくするのだと感じました。